最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)1474号 判決 1949年8月09日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人水沼淑郎の弁護人木村篤太郎、同小林蝶一、同信部高雄の上告趣意第三点について。
被告人水沼淑郎の弁護人小林蝶一が原審の所論公判期日に出頭せず、被告人においても同弁護人の弁論を抛棄しなかったのに、原審が同弁護人の弁論を聽かないで結審したことは所論の通りである。しかし、小林弁護人に対しては右公判期日の通知があったに拘らず同弁護人が出頭しなかったことは記録上明らかである。このように、適法な手続によって召喚を受けながら公判期日に出頭しなかった弁護人は自ら期日を懈怠したものであって、本件のように弁護人を要しない事件の審理については出廷した弁護人に弁論をする機会を與えれば足りるのであり、不出廷の弁護人の弁論を聽かないで弁論を終結しても不法に弁護権の行使を制限したものでないから論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する)
よって最高裁判所裁判事務処理規則第九條第四項旧刑訴法第四四六條に從い主文の通り判決する。
以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)